EXOFIELD 体感イベントレポート
ヘッドホンリスニングなのに、あたかもスピーカーで聴くような自然な音場を再現する!
JVCケンウッドの頭外定位音場処理技術「EXOFIELD(エクソフィールド)」ブロガー体験会
ヘッドホンを使った音楽再生環境への注目度が高まりつづけている現在。世界各国のメーカーから様々なモデルが次々とリリースされています。
しかしヘッドホンという構造上、聴こえてくる音は頭内に定位します。生演奏や、スピーカーを通して聴いたときの音場と異なり、頭の中にある小さなステージから音が発せられているような印象を受けます。
開放型のヘッドホンを使えば音場を広げることができますが、それでもサウンドステージは小さめ。かつ屋外では音漏れが多くて使いづらいという個性が…。
そこでJVCケンウッドは新たに、頭外定位音場処理技術「EXOFIELD」を開発しました。
聴覚に訴えかける音響機器の新テクノロジーだからこそ、オフラインなイベントが重要といえるでしょう。2017年4月19日(水)、東京・神宮前にあるビクタースタジオで、頭外定位音場処理技術「EXOFIELD」のモノフェローズイベント(家電系ブロガーイベント)が開催されました。
まずは座学からのスタートです。JVCケンウッド EXOFIELD事業開発室 室長 江島氏にEXOFIELDのご説明をいただきました。
「EXOFIELD」は、実際のリスニングルームの音場をヘッドホンで再現する技術です。キーポイントになるのは「測定」と「環境」。リスニングルームという環境の音場を測定したデータを持ち帰ることで、どこでもリスニングルームと同じ音場での音楽再生が可能になるそうです。
まずは「測定」についてのお話を伺いました。
顔の形や体型が異なるように、人の耳の形や外耳道の長さは人それぞれ異なります。そこで耳内音響マイクシステムを耳に装着して、リスニングルームから出る音の音響特性を測定します。
そして個人特性生成アルゴリズムで解析することで各個人に最適化された音場処理を行います。ヘッドホンの装着時に少しのズレがあったとしても、その特性のズレも含めて最適化できるそうです。
一度測定したデータはスマートフォンアプリ(iOS、Android)で反映し、音楽再生時に補正をかけることで音場を再現できます。いつでもどこでもリスニングルームの音場を再現するために、モバイルリスニングからのアプローチを可能にします。
「EXOFIELD」の恩恵を受けられるのは圧縮音源だけではありません。ハイレゾ音源にも対応可能ですし、サラウンド音声の再生にも対応します。ホームシアターやVRコンテンツの立体音場も、2chのヘッドホンで再生できるのです。
次に「環境」について、ビクタースタジオ エンジニアグループ ゼネラルマネージャー 秋元氏よりご説明をいただきました。「結論からいって、今日はビックリしていただきます」という自信あふれるお言葉からスタートです。
会場となったビクタースタジオは、レコーディングスタジオやマスタリングルームがある施設です。エンジニアも所属して様々な音楽メディアを手がけている、歴史が深く、そして音楽現場の最先端となるスタジオです。
“ビクター”という名前がついてはいますが、業界/レーベルの垣根を越えて活動しているのも特徴の1つ。JVCケンウッドグループのレコーディングだけではなく、他社/他レーベルの業務も請け負っています。
「だからビクタースタジオは、業界全体の基準(リファレンス)なのです」
高音質化技術の開発もビクタースタジオが軸となって推進。また音響製品の音作りもサポートしています。音楽製作以外の分野でも活躍しています。「EXOFIELD」の開発も、ビクタースタジオが全面的にサポートしています。
そして出てくるのが「環境」のワードです。今回の「EXOFIELD」体験会においては、音楽業界基準環境といえるビクタースタジオの音を再現し体感いただきました。
「EX Roomと名付けた、ビクタースタジオの中でも要となるリスニングスタジオを設定しました。マスターやできあがった製品の音も確認する部屋なんです。いうなればビクタースタジオの音の出口となる場所。音楽製作現場とユーザーのみなさんをおつなぎする、ジャストな部屋なんです」
参加人数が多かったことから、参加した皆さんは2班に分かれました。まずはビクタースタジオの施設内をご案内いただきました。
こちらはオーケストラ編成の曲もレコーディングできるというスタジオです。広い! 天井も高い!
スタジオの空間の広さによって反響が異なりますし、楽器によって音の出方も異なります。そこで出音の異なる楽器の音を同時に、バランスよく収録するために、脇にある小部屋で音を録ることもあります。
レコーディングの内容によって、録音環境を変える必要があります。そのためグランドピアノが入っている小部屋の壁は大きく開くようになっていて、タイトで引き締まった音も、反響が多く響きがリッチな音も録れるような工夫がされていました。
マイクにもこだわりがありますよ。秋元氏が右手に持っているのが真空管のマイクです。現在は製造していないビンテージマイクで、予備を購入するとしたらネットオークションで競り落とすしかないそうです。ケーブル、電源込みで相場は驚きの100万円!
左に持っているのは、現在でも売られている1万円くらいのダイナミックマイク。レコーディングでもコンサートの現場でも使われます。
「さてこの2本、レコーディングにおいてはどちらが重要でしょうか?」
真空管のマイク、という意見が多い中…
「価値は一緒なんです」
そうなんですか!
100万円のマイクでしか作れない音もあれば、1万円のマイクでしか作れない音もあるそうです。なるほど、レコーディングエンジニアの方は最終的に作り込む音を想定して、マイクを選んでいるのですね。
実際にマイクの違いによる音の違いも聴かせていただきました。
ダイナミックマイクはクリーンでスタンダードな印象。それと比べてコンデンサーマイクは、シャッキリとした精細感があります。音の揺らぎもしっかりと捕らえています。リボンマイクは逆に輪郭がマイルド。甘ささえ感じる音になっています。そして真空管マイクは低域がキャッチー。パワーがありますね。音がグングンと前に出てきているようにも感じます。
マイクはケーブルとの組み合わせて狙いの音へと定めていく。その上でミキサーで各音域を絞ったり増やしたり、音を微調整していきます。
まさに“エンジニア”という役職の名がふさわしいお仕事ですね!
お待ちかねのEX Roomにやってきました。DVDやブルーレイのサラウンドコンテンツもチェックする部屋ゆえに多くのスピーカーが並んでいますが、今回は2chステレオ再生時の音場を再現するため、左右の2本のスピーカーを使います。
まずはヘッドホンを装着してセッテイング。ヘッドバンドの長さを調整します。
続いて耳内音響マイクを耳にかけます。耳穴にしっかり入るようにセッテイングします。
この状態でテスト音を鳴らして、マイクで鼓膜近くの音を測定します。測定後パソコンで解析。所要時間は1分もかかりません。
さらにマイクを装着した状態で、ヘッドホンも装着。ヘッドホンからの音を測定します。
両方のデータを照らし合わせて、耳の中の反響状態がスピーカーで鳴らしたときと同じように補正をして…。
いざ実聴! まずは「EXOFIELD」がOFFの状態。普通に、ヘッドホンで再生したときの音場を体験します。
そして「EXOFIELD」をONにすると…。
「おー!」と驚きの声が!
そうなのです。楽器の音、ボーカルの声が頭内ではなく、本当に目の前のスピーカーから聴こえてくるような印象を受けるのです。
なるほど、「EXOFIELD」を使えば今回のようなリスニングルームの再現もヘッドホンで可能になりますし、測定する場所を変えれば、他の音場も再現できるでしょう。例えばライブハウスの音場も、屋外のフェス会場の音場も、コンサートホールの音場もスマートフォン&ヘッドホンで再現できるのでは?!これは期待度が高まりますね!